【NEW】礼服に生えたカビの除去・メンテナンス方法

今年はカビの被害を訴えて礼服が持ち込まれることが多い夏でした。
これは夏の前の湿度と温度の高い時期がとても長かったことが原因ではないかと思われます。

一度しか着ていなくても、いつも通り保管していても、カビは条件が揃ってしまうと生えてしまいます。
この回では、カビの生える原因や自宅でのカビ取りの方法とカビを生やさない対処法をご紹介いたします。

 

カビが生える条件

汗や皮脂はカビの栄養源、少しでも付着しているとカビが生える状況を作ってしまいます。
たった一度しか着用していなくても、皮脂や汗は付着するとカビが生えます。

カビはクリーニングを出していても生える場合があります。
洗っているのになんで?と思われるかもしれませんが、それはドライクリーニングはドライ溶剤(石油系有機溶剤)を使って洗うためです。ドライ溶剤は皮脂などの油性の汚れを良く落とすのですが、反対に汗や塩分などの水溶性の汚れは落としきれないという特性があります。落としきれなかった汗はそのまま繊維に残るので、カビが生える原因を作ることになってしまいます。

カビはそこに湿度(60%以上)、温度(20~30℃)の環境の条件が揃うと皮脂や汗、汚れが付着している場所から生えます。

また素材がウールやシルクなどの天然素材の場合も、それ自体がカビの栄養源になるためカビが生えやすくなります。こういったカビの好む栄養、環境、素材によってカビの生える条件が揃えば揃うほど生える可能性が高くなります。

 

カビが生えたら確認すること

衣類にカビが生えてしまった時に自宅で対処する場合。
まず確認しなければいけないことは洗濯表示です。

水洗い、漂白OKの素材かを確認してください。
もし洗濯表示がNGになっている場合は自宅で対処するのはやめてクリーニング店に任せてください。
「でもクリーニングは油性の汚れしか落とせないでしょ?」と思われるかもしれませんが、クリーニング店は水溶性の汚れを落とす加工も行っていますので、最後の項目でお話しします。

次に見ていただくのが、カビの種類です。生えてしまったカビは白いのか、黒いのか?
カビの種類によって対処方法が変わるので確認の必要があります。
種類の確認が可能なカビの場合は次の項目の対処方法をご覧ください。

 

カビの種類と特徴・落とし方

ここでご紹介するのは応急処置の方法です。
まずは裏側などの目立たないところで、試してから行ってください。
この方法でいったん取れたとしても、カビの根は深く、胞子は広範囲に付着しています。
必ずクリーニング店に依頼し、カビが生えていたことも伝えてください。

白カビ

ふわりとした白いカビですが、衣服に付いている時は斑点に見えたり、パウダー状に広がってホコリのように見えたりします。根は浅いため比較的除去しやすいカビです。

お湯で取る(素材:ポリエステル)

  1. まず白カビは胞子が拡散しやすいため、屋外でタオルなどを使って叩いて取り除きます。
  2. 表面の白カビが取り除けたら、30〜40℃ぐらいのお湯でタオルをしっかり絞りカビの部分を擦らずに叩きながら更に取り除いていきます。擦るとカビが広がったり繊維が毛羽だったりするので、ぽんぽんと叩くのがポイントです。
  3. 肉眼で見えるシミが取り除けたら、当て布をしてアイロンがけを行います。アイロンの温度は必ず洗濯表示を確認して、規定の温度で行いましょう。ここでアイロンをかけるのはカビを死滅させるのが目的です。

アルコールで取る(素材:ポリエステル・ウール)

  1. 白カビは胞子が拡散しやすいため、屋外でタオルなどを使って叩いて取り除きます。
  2. 細かなブラシにアルコールを含ませて、カビの生えている場所にトントンと染み込ませてカビを取る。
  3. ドライヤーで乾燥させる。温風は高温にならないように生地に近づけすぎないように注意しましょう。

叩いて取り除く(素材:シルク)

シルクは非常に繊細な生地のためお湯やアルコールは使用するのは厳禁です。
そのため家で対処できる方法は限られたものになります。

  1. 白カビは胞子が拡散しやすいため、屋外でタオルなどを使って優しく叩いて取り除きます。
    シルクはこすると白化する(毛羽だって白くなる)ため絶対こすらないようにしましょう。
  2. 陰干しをする。

 

黒カビ

黒カビは根が深く、クリーニングでも完全に除去するのが難しいカビです。
いったん取り除けたように見えても、根が残っていてまた生えてくることを繰り返します。
そのため白カビの除去のようにお湯やアルコールでは除去できません、漂白剤を使用する方法なども紹介されていますが、漂白剤は生地を傷めたり、生地自体の色を落としてしまう可能性もあるためおすすめはしません。
黒カビが生えた場合は早めにクリーニング店にご相談ください。

 

カビを生やさないために

カビは一度生えると根絶やしにしない限り何度も生えてくるので大変厄介なものです。
今回は礼服でご紹介しましたが、滅多に着用しなかったり、長期で締め切ったクローセットに保管しているものならどんな衣類にもカビの生えるリスクはあります。そして「一度しか着ていないのに」というお話しはよくお聞きします。たった一度ですが、汗や皮脂はつくものなんだということを理解していただき、片付ける前には必ず洗うこの習慣を定着させることが一番大切です。カビは胞子を飛ばすので、一緒に収納している衣類にも移りやすくなります。クリーニング店にお持ち込みになる場合は他のものとは分けて必ずビニール袋に入れて運びましょう。

そして、一番初めにお話ししたクリーニングだけでは汗が落ちないという問題ですが、汗はドライクリーニングでは落ちず生地に汗の成分の塩分が残ってしまいます。この塩分はカビの原因になるだけでなく、クリーニングするたびに蓄積されていくので、肌触りの悪いゴワゴワした生地になったり嫌なニオイを発生させたりします。汗のかく季節に着用された場合は礼服だけでなくビジネススーツ、スラックスなども「汗取り加工」をオススメします。家庭洗濯もそうですが、汚れの原因をしっかり認識した上で洗うことで、生地を傷ませることなく長く着用することができます。

収納する際も気をつけなければいけません。カビは湿度(60%以上)、温度(20~30℃)の環境で発生しはじめます。しばらく締め切ったままで収納しているとカビの生えるリスクが高くなります。お天気の良い日に定期的に陰干ししたり、風通しをよくしてカビの好む環境を作らないようにしましょう。

最後に、クリーニングをご利用された後のお願いです。
お返しする際に被せているカバーはご自宅に待ち帰られた時点で必ず外してください。カバーは保護のために被せているものです。このカバーをつけたまま片付けてしまうとガス変色を起こしたり、湿気をこもらせる原因になります。
収納用の仕舞い込みカバーは店頭で販売しておりますので、スタッフにお声掛けください。

礼服は一度購入したら長く着用したいですよね。
ちょっとしたメンテナンスをすることで、カビをはじめから寄せ付けない環境を整え、気持ち良く着られるようにしましょう。